【特設ページ制作】地図は、説明のいらない入口だった。観光三重様(公益社団法人三重県観光連盟)
三重県の公式観光情報サイト「観光三重」。
その中で、県内のグルメを紹介する特設ページを1本、担当させていただきました。 要件定義、デザイン、実装まで。期間は1ヶ月半です。
| 要件 | 詳細 |
|---|---|
| クライアント | 公益社団法人 三重県観光連盟 様 |
| 媒体 | 三重県観光・旅行情報公式サイト「観光三重」 |
| ご支援内容 | 特設ページの要件定義・情報設計・デザイン・実装 |
| 制作期間 | 約1ヶ月半 |
| 担当範囲 | 要件定義 / 情報設計 / Webデザイン / コーディング |
読者を、絞ることができない
ふつう、Webサイトの設計は「誰に向けて作るか」を決めるところから始まります。 30代の共働き世帯。地元の中小企業の経営者。そうやって的を絞るほど、言葉も見た目も鋭くなります。
公式の観光サイトでは、それができません。
このページを見る人は、県外から旅行を計画している方かもしれません。三重に住んでいて、週末の外食先を探している方かもしれません。バス旅行のパンフレット代わりに見ているご高齢の方かもしれませんし、SNSの投稿から流れてきてスマートフォンで数十秒だけ見る方かもしれません。
そのどれかを選んで、他を切り捨てるという判断ができない。 公的な情報発信だからです。
02. だから、地図にした

そこで、三重県の地図をページに埋め込みました。
理由は、地図が「説明のいらない入口」だからです。
このページを見る人は、自分が何を食べたいかは決まっていなくても、「どこに行くか」はたいてい決まっています。 伊勢に行く。鳥羽に泊まる。四日市の近くに住んでいる。その一点だけは、読者の側がすでに持っている情報です。
だったら、こちらが用意した分類を覚えてもらうのではなく、読者がすでに持っている「場所」の感覚に、情報のほうを紐づければいい。
もうひとつ、地図でなければならない理由がありました。 三重県には「北勢」「中南勢」「伊勢志摩」「伊賀」「東紀州」というエリア区分があります。県内の方には馴染みのある呼び方ですが、県外の方には、ほぼ通じません。 「東紀州」と文字で書かれて、県の南端だと分かる人はそう多くないはずです。
けれど、地図の形なら通じます。南のあたりを指させばいい。 言葉を知らなくても使える。これが「誰が見てもわかりやすい」の中身です。 説明書きを増やすことではなく、説明を必要としない仕組みを選ぶこと。
地図から入って、その土地の名産品にたどり着く。県内各所に何があるのかが、読みこまなくても、見た瞬間に伝わる。そういう作りにしました。
03. 0.5秒で「おいしそう」と伝える
もうひとつ、お客様から明確にいただいていたご要望が、ぱっと見てグルメのページだとわかることでした。
これは見た目の好みの話ではなく、流入経路の話です。 特設ページには、SNSの投稿、サイト内のバナー、検索結果から人が来ます。いずれの場合も、読者は前置きなしにページの先頭へ着地します。 そして、自分に関係があるかどうかを、文章を読む前に判断します。
「三重県の食の魅力をご紹介します」と書いてあっても、読んでもらえなければ意味がありません。だから、文字が読まれる前に伝わる状態を作る必要がありました。
- 料理の写真そのものを画面の主役に置く
- 上品な余白でまとめるより、密度と熱量を優先する
- 食欲に働きかける暖色を基調にする
- ロゴやキャッチコピーではなく、食べ物で第一印象を作る
企業サイトで良しとされる「洗練された、余白の効いたファーストビュー」は、ここでは正解ではありません。このページに必要だったのは、静けさではなく、おいしそうという直感でした。
04. ランディングページという構造を選んだこと
納期は1ヶ月半。決して長くはありません。
結果として無理なく収まったのですが、それは急いだからではなく、構造の選び方が内容と合っていたからだと考えています。
このページの目的はひとつです。三重の食に興味を持ってもらい、行き先を見つけてもらうこと。目的がひとつなら、ページを何階層にも分ける必要はありません。上から下へ一本のスクロールで読み切れる、ランディングページに近い構造が素直な答えでした。
階層が浅ければ、迷子になる読者もいません。回遊のための導線設計も最小限で済みます。実装側でも、ページ間の状態管理や共通パーツの調整といった作業が発生しません。
内容と構造が一致しているとき、制作は速くなります。 逆に、内容に合わない構造を選ぶと、そのズレを埋めるための作業がずっと続きます。短納期でいちばん効くのは、作業を速くすることではなく、最初に構造を間違えないことです。
まとめ
「誰が見てもわかりやすい」は、やさしい響きの言葉ですが、実際にはかなり厳しい要求です。読者を選べない、前提知識を期待できない、離脱までの時間が短い。制約だらけの条件のなかで、それでも伝わる形を探すことになります。
今回その答えになったのが、地図でした。 新しい仕組みを発明したわけではなく、誰もがすでに使えるものを選んだ、というだけの話です。ただ、わかりやすさというのは、たいていそういうところにあると思っています。
三重県の観光サイトのお仕事は、地元の人間として、少し特別な気持ちがありました。
私は明和町の生まれで、県内のどこに何があるかは、体でおぼえています。ただ今回作ったのは、私のような人間のためのページではありません。三重をまだ知らない方が、はじめて県の形を見て、ここに行ってみようかと思う。その一回のためのページです。
だから地図を選びました。説明のいらないものが、いちばん強いと思っています。
おいしいものを見つけて、実際に足を運んでくださる方がひとりでも増えたなら、これ以上のことはありません。