ITコンサルティングはAIでなくなるのか。消えるのは調べる仕事、残るのは決めてやり切る仕事
まいどおおきに、朝倉です。
今日は持論を綴っていきます。
結論から書くと、ITコンサルティングという仕事はなくなりません。
ただし、中身は入れ替わります。
調べる、まとめる、資料にするという工程は生成AIに置き換わっていきます。
一方で、矛盾した条件のなかで決断を下し、社内外の人を説得し、現場に定着するまで粘り強く実行する部分は残ります。というより、そこしか残りません。
この記事では、Big4(デロイト・PwC・EY・KPMG)が実際に何をしているかという事実から出発して、ITコンサルティングのどの部分が消え、どの部分が残るのかを整理します。そのうえで、地方の中小企業がコンサルティングを発注するときに何を見ればよいのかという、買い手側の判断基準まで落とし込みます。
※数値・事例は2026年7月時点の公開情報にもとづいています。
いま業界で何が起きているか
「AIでコンサルがなくなる」という話は2023年頃から繰り返されてきました。
ただ、当時は予測でした。いまは違います。実際に組織の形が変わり始めています。
Big4はAIを「提案の目玉」から「業務の前提」に移した
デロイトは生成AI基盤「Zora AI」、EYは「EY.ai」、KPMGは「AI Workbench」、PwCはAIエージェントを前提とした業務基盤を、それぞれ自社の中核に据えています。かつてAIは「先進的な提案の一要素」であり、PoC(実証実験)で止まっても評価されるテーマでした。それが、業務・意思決定・運用を横断的に組み替える基盤へと位置づけを変えています。
ここで重要なのは、彼らがAIを「売るもの」としてだけでなく「自分たちが使うもの」として組み込んだ点です。監査法人系のファームがITの導入を一気に進めるということは、コンサルティングの原価構造そのものが変わるということを意味します。
デロイト米国は職位の階段そのものを組み替えた
象徴的な動きがあります。デロイト米国は2026年6月1日から、全社の職位名称を刷新しました。対象は米国の全部門、約18万1,500人です。
これまでのアナリスト → コンサルタント → マネージャーという年次に紐づく昇進の階段をやめ、職務内容にもとづく名称へ切り替えました。たとえば従来のシニアコンサルタントは「Software Engineer III」や「Senior Consultant, Functional Transformation」といった、機能を示す肩書きになります。上位には「Leaders」という区分が新設され、社内的にはL45、L55といった英数字のレベルで管理されます。
同社はこれを「タレントアーキテクチャの近代化」と説明しており、日々の業務や報酬の考え方自体は変わらないとしています。しかし、旧来の職位体系が「伝統的なコンサルタント像」を前提に設計されたものであり、それがもう実態に合わないと判断されたことは明らかです。
そのデロイト自身が「スキルの梯子が壊れる」と警告している

もうひとつ、見逃せない指摘があります。デロイトの調査部門は、AIが新人の仕事を吸収した結果、「壊れたスキルの梯子(broken skills ladder)」が生じると警告しています。
同社の分析によると、2025年のあいだに従業員のAIへのアクセス機会は50%増加しました。同時に、2022年から2025年の米国の求人を見ると、エントリーレベルのデータサイエンティストやソフトウェア開発者の採用が減る一方で、シニア人材への需要は堅調に推移しています。かつて若手が経験を積むために担っていた反復作業をAIが引き受けた結果、専門家が育つ経路そのものが細っている、という指摘です。
これはコンサルティング業界の内部で起きていることの説明にもなっています。ジュニアが大量の工数をかけて担ってきた市場調査、資料作成、データ分析は自動化されました。そして、ピラミッドの底辺で人を抱えて工数を売るというビジネスモデルは、成立しにくくなっています。
消えるのは「情報の非対称性」で稼いでいた部分
ここから、何が消えるのかを整理します。
従来のコンサルティングの価値の一定部分は、率直に言えば情報の非対称性でした。業界の相場を知っている。他社の事例を知っている。フレームワークを知っている。それを短期間で調べて、体裁を整えて提出できる。その手間と時間を買っていただいていた、という側面があります。
この部分は、生成AIによって限界費用がほぼゼロになりました。
| 工程 | 従来 | 現在 |
|---|---|---|
| 市場調査・競合調査 | 若手が数日〜数週間 | 数十分で一次案が出る |
| ベンチマーク収集 | 有料DBと人海戦術 | 公開情報の横断が即時 |
| 分析軸の設計 | 経験者のノウハウ | 定型フレームは即座に提示される |
| 報告資料の作成 | 深夜作業の代名詞 | 構成案から初稿まで自動生成 |
| 議事録・要点整理 | 担当者が翌日までに | 会議終了と同時に完了 |
これらに高い単価を付け続けることは、遠からず難しくなります。私はここについて楽観していません。「調べてまとめて提出する」ことを主たる価値としてきた事業者は、実際に厳しくなると考えています。当社もこの領域を売り物にはしません。
それでも残る三つの仕事
では何が残るのか。私は三つだと考えています。決める、通す、やり切る、です。
一つめ、決める
データは選択肢を増やしますが、決めてはくれません。
現実の経営判断は、情報が揃わないまま下されます。むしろ、情報が増えるほど選択肢が増え、決めることは難しくなります。売上を取りにいくのか、利益率を守るのか。今いる社員に負荷をかけるのか、外注費を増やすのか。三年後の理想像を取るのか、今期の資金繰りを取るのか。これらはトレードオフであって、正解が計算で出る問題ではありません。
そして決断には、外れたときに責任を引き受ける主体が必要です。誰が責任を負うのかという問いに、AIは答えられません。この構造は、モデルの性能が上がっても変わりません。
コンサルティングの役割は、この決断を経営者と一緒に引き受けることだと考えています。代わりに決めるのではありません。決めるために必要な材料を並べ、選択肢のそれぞれで何を失うのかを率直に示し、決めたあとは一緒に責任を持つ。ここが中核です。
二つめ、通す
決まった施策は、そのままでは動きません。人が動かないからです。
新しいツールを入れると決めた。しかし現場のベテランが「今のやり方で問題ない」と言う。経理は「二重入力が増えるだけだ」と言う。社長は導入したいが、部長が首を縦に振らない。取引先のシステムとの兼ね合いもある。
この折衝は、極めて人間的な作業です。誰がキーパーソンなのか。その人が本当に嫌がっているのは何なのか。表向きの反対理由と本音は違うことがほとんどです。ここを解きほぐすには、その場に何度も足を運び、雑談を含めて関係を作るしかありません。
正しい提案が通らない理由の大半は、提案の質ではなく、人の納得の問題です。
三つめ、やり切る
そして最も泥臭く、最も評価されにくいのが、定着させる仕事です。
導入して終わりではありません。運用開始から三か月後に、誰も使っていないという状態は本当によく起こります。入力ルールが曖昧だった。担当者が異動した。忙しい月末にエクセルに戻ってしまった。こうした一つひとつを見つけて、直して、また声をかける。
華やかさはありません。しかし、成果が出るかどうかはここで決まります。
データが示す「実行の壁」
私の主観だけで書いても説得力がないので、数字を挙げます。
生成AI導入の95%はROIを出せていない
MITの研究プロジェクトNANDAが2025年8月に公表したレポート「The GenAI Divide: State of AI in Business 2025」は、企業の生成AI導入について厳しい結果を示しました。米国企業が生成AI関連に300億〜400億ドルを投じたにもかかわらず、収益に明確な効果を出せたのは全体の5%にとどまり、95%はほとんど、あるいはまったくリターンを得られていないという内容です。調査は経営幹部150人へのインタビュー、従業員への調査、300件超の公開事例の分析にもとづいています。
注目すべきは失敗の原因です。レポートはこれを、AIモデルの性能不足ではなく、組織側の統合の欠陥、いわゆる「学習の壁」だと指摘しています。ツールは十分に賢い。しかし、企業のワークフローに馴染ませられていない。
つまり、詰まっているのは技術ではなく実行です。
朝倉の一言
- 「学習の壁」を、私は技術の話だとは考えていません。当社がAI導入を支援していて詰まるのは、いつも人が使い始めるまでの手前の部分です。中小企業は社内のITスキルの幅が大きく、平均に合わせた研修はどの層にも届きません。少人数の職場では、使いこなせていないことが全員に見えてしまう。だから、そもそも触らないという判断が起こります。有効なのは研修ではなく、一人の困っている業務を実際に片付けてみせることです。体験が先、教育が後。この順番を守れるかどうかで、AI投資の成否はほとんど決まると考えています。
中小企業のDXは「取り組む企業の割合」が横ばいのまま
国内に目を移します。中小企業基盤整備機構が2026年2月に公表した「中小企業のDX推進に関する調査(2025年)」によると、DXに「既に取り組んでいる」「取組みを検討している」と回答した企業は39.1%で、前回調査(2024年12月)とほぼ横ばいでした。調査は2025年12月に実施されています。
一方で、取り組み内容としての「AIの活用」は28.4%となり、前回調査から14.1ポイントの大幅増となりました。課題として挙げられたのは、IT・DX推進に関する専門人材の不足と予算の確保です。
この二つの数字の組み合わせは示唆的です。AIというツールは急速に広がった。しかし、DXに取り組む企業の裾野そのものは広がっていない。ツールが安くなっても、実行できる人がいなければ動かない、という構図がはっきり出ています。
計画の値段は下がり、実行の値段は上がる
データを集めてPDCAを回すというのは、言葉としては当たり前です。しかし、AIによってこのサイクルの各工程のコストは、均等には下がりません。
| 工程 | AIによる変化 | 相対的な希少性 |
|---|---|---|
| Plan(調査・計画) | 大幅に低コスト化 | 下がる |
| Do(実行・折衝) | ほぼ変わらない | 上がる |
| Check(効果検証) | 大幅に低コスト化 | 下がる |
| Action(修正・定着) | ほぼ変わらない | 上がる |
計画と検証が安くなればなるほど、やったか、やらなかったかの差がすべてになります。同じ精度の分析レポートを誰もが手に入れられる世界では、差がつくのは分析の質ではなく、そのあと現場で何が起きたかだけです。
これが、私がリサーチ業務は消えると考える一方で、コンサルティングは残ると考える理由です。消えるのは工程であって、機能ではありません。
地方の中小企業では、この傾向がさらに強く出る
ここまでは業界全体の話です。当社が向き合っている地方の中小企業では、傾向がもっと極端に出ます。
理由は単純で、専任の担当者がいないからです。
大企業であれば、コンサルタントが提出した計画を受け取って、社内で展開する情報システム部門や企画部門があります。中小企業にはそれがありません。決める人と、実行する人と、日々の業務を回す人が、同じ一人か二人であることがほとんどです。
この状況で「立派な計画書を置いていく」タイプの支援は機能しません。計画書を実行に翻訳する人がいないからです。にもかかわらず、そこにコストを払ってしまうケースを何度も見てきました。
必要なのは、決めるところに伴走し、社内の反対を一緒にほどき、運用が回るまで手を動かす存在です。範囲としては地味で、外からは何をやっているのか見えにくい仕事です。しかし、中小企業の現場で成果を出すには、ここを引き受けるしかありません。
発注する側として、何を見ればよいか
買い手の立場に立って、確認すべき点を挙げます。当社に発注いただく場合も、他社に発注される場合も、同じ基準で見ていただいて構いません。
| 確認したいこと | なぜ重要か |
|---|---|
| 納品物は資料か、それとも動いている状態か | 資料のみが成果物なら、その部分はいずれAIで代替できます |
| 導入後、何か月伴走するのか | 定着は導入後3〜6か月で決まります。ここが契約に含まれているか |
| 現場に何回来るのか、誰が来るのか | 提案者と実行者が別人だと、折衝の質が落ちます |
| 社内の反対にどう対処するかの想定があるか | 反対は必ず出ます。想定がない提案は実行を考えていません |
| 契約終了後、自社だけで回せる状態にする計画があるか | 依存させ続ける設計になっていないかの確認です |
| 使っているAIツールを開示しているか | 隠す理由はありません。工数削減分が価格に反映されているかも含めて |
最後の項目は、発注側から聞きにくいかもしれません。しかし、支援側がAIで工数を圧縮しているなら、その分は価格か、あるいは実行支援の厚みとして還元されるべきものだと考えています。
この見立てが外れるとしたら
公平を期すために、自分の主張の弱点も書いておきます。
一つは、折衝の一部もAIが担う可能性です。すでに顧客対応の一次窓口はAIエージェントに置き換わり始めています。社内調整の下準備、たとえば関係者ごとの説明資料の出し分けや、想定される反論への回答準備といった部分は、確実に自動化されます。私が「人にしかできない」と書いた領域は、想定より狭いかもしれません。
もう一つは、実行支援の単価が下がる可能性です。上流の計画業務から人が押し出されると、実行支援の領域に供給が集中します。希少だから高く売れる、という単純な話にはならないでしょう。
それでも私は、決断と、そのあとを粘り強くやり切ることの価値が消えるとは考えていません。責任を引き受ける主体が必要である以上、そこには人が要ります。
当社の立場

株式会社ASAKURAは、今後もITコンサルティングを続けます。ただし、力点を明確にします。
調べる、まとめる、資料にするという工程については、AIを徹底的に使います。使わない理由がありません。従来なら数日かかっていた市場調査を数時間で済ませ、その分の時間を現場に向けます。ここに人件費を積んで請求することはしません。
そのうえで、当社が価値を置くのは、決めるところに伴走することと、決めたことを定着するまでやり切ることです。地味で、外からは見えにくく、報告書にも書きにくい仕事です。しかし、地方の中小企業でデジタルが実際に成果につながるかどうかは、ここでしか決まらないと考えています。