これは、ホームページではなかった。WDG DOG KENNEL様
三重県度会町にある犬舎。
アメリカのチャンピオン血統を受け継ぐ子犬を扱っています。
ご依頼は「ブランディングのページを1枚」。ただ、話を伺っていくうちに、作るべきものはホームページではないとわかってきました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| クライアント | WDG DOG KENNEL 様(三重県度会郡度会町) |
| 業種 | 犬舎・ブリーダー(アメリカンブリー) |
| ご支援内容 | 業界調査・要件定義・情報設計・Webデザイン・コーディング・納品管理 |
| 形式 | 1ページ完結型のランディングページ |
| サイト | https://wdg-dog-kennel.com/ |
01. 知らない業界の仕事を、どう引き受けるか
この業界のお仕事は、初めてでした。
犬舎とブリーダーの違い。血統書がどう扱われるのか。お客様はどうやって犬舎を選ぶのか。何も知らない状態からのスタートです。
こういうとき、いちばん危ないのは「Webの型」で押し切ってしまうことです。 トップに大きな写真を置いて、選ばれる理由を3つ並べて、お客様の声を入れて、最後にお問い合わせボタン。どんな業種にも当てはまる型はあります。当てはめれば形にはなります。ただ、形になるだけです。
そこで、デザインの前に業界を調べる時間を取りました。何が価値とされているのか。買う側は何を不安に思うのか。売る側にはどんな決まりごとがあるのか。 要件定義とは、業界の言葉を覚える作業でもあります。 覚えないまま作った提案は、お客様が読めばすぐにわかってしまいます。
02. わかったのは「これはホームページではない」ということ


調べていくうちに、この案件の構造がはっきりしてきました。
一般的な企業サイトでは、紹介する対象は会社です。会社が提供するサービスは、基本的にいつでも同じものを提供できます。
犬舎は違います。
- 商品は一頭ずつ違う。毛色も、性別も、性格も、価格も、すべて個体ごとです
- 同じものは二度とない。「これと同じ子をもう一頭」はできません
- 時間の制約がある。子犬は成長しますし、決まればいなくなります
つまり、紹介すべき主役は犬舎ではなく、一頭ずつの犬でした。 構造としては、企業サイトよりも不動産や中古車の情報ページに近い。会社を知ってもらうページではなく、一頭に出会ってもらうためのページです。
そしてもうひとつ。このページには、広告からの着地という役割がありました。 Meta広告やリスティング広告で「この子」を見せ、興味を持った方がそのまま詳細にたどり着き、見学の問い合わせまで進む。広告の受け皿として機能することが、実質的な要件でした。
だから、階層のあるホームページではなく、1ページで完結するランディングページを選んでいます。形式が先にあったのではなく、目的から逆算した結果です。
03. 一頭ずつに、たどり着けるように
主役が個体であるなら、設計もそこに合わせます。
リボンの色で、一頭ずつを識別する。 オレンジ、ブルー、パープル、ピンク、イエロー。名前がまだない子犬たちを、色で呼び分けられるようにしました。文字の情報だけで見分けるのは難しいものですが、色なら一瞬で区別がつきます。会話のなかでも「オレンジの子」と言えば通じます。
詳細は、ページを離れずに開く。 気になった子をタップすると、その場で詳細が開きます。複数の写真、性別、誕生日、毛色、そしてその子の性格を書いた一言。別ページに飛ばさないのは、比較して迷う時間を邪魔しないためです。犬を選ぶという行為は、行ったり来たりしながら気持ちが固まっていくものだと考えました。
親犬から先に見せる。 ページの前半に、父方・母方の血統を紹介する構成を置きました。アメリカのチャンピオン血統という価値は、子犬の写真だけでは伝わりません。どこから来た子なのかを先に示してから、個体を見せる。 この順番自体が、この業界の価値の伝え方でした。
04. 法律が、そのまま要件になる業界
この案件でいちばん学びが大きかったのは、ここです。
犬猫の販売は 動物愛護管理法 の規制対象で、広告や販売の場面に法令上の決まりごとがあります。つまり、デザインの都合で省略できない要素が存在します。
要件定義の段階から、次の点を織り込みました。
- 動物取扱業の登録番号・登録年月日・有効期限・動物取扱責任者の氏名を明示する (ページ下部の「INFORMATION」に固定で掲載しています)
- オンライン見学だけでは完結させない お迎えの前には事業所での現物確認と対面説明が必要であることを、オンライン見学の案内と同じ場所に明記しました
- 問い合わせフォームに、飼育環境の確認を組み込む 住環境が整っているか、同居のご家族全員の同意があるか。チェックを経ないと送信できない設計にしています
3つ目は、法令対応というより犬舎側の姿勢です。フォームに項目を足せば、当然ながら送信の手間は増え、問い合わせ数は減る方向に働きます。それでも入れました。この業界で長く信頼される犬舎になるために、入口で確認しておくべきことがあるという判断です。
問い合わせを増やすことと、良い問い合わせを増やすことは、同じではありません。 ここは要件定義の段階でしっかり話し合った部分でした。
打ち合わせのたびに子犬が足元に寄ってくるので、正直まったく集中できませんでした。あれは反則だと思います。
はじめての業界だったので、最初は質問ばかりしていました。血統のこと、法律のこと、お客様がどうやって犬舎を選ぶのか。教えていただくうちに、これはホームページじゃなくて、一頭ずつに会ってもらうためのページだな、と腹落ちしました。
オレンジ、ブルー、パープル、ピンク、イエロー。リボンの色で呼んでいた子たちが、今どこかの家族の一員になっているのだと思うと、なかなか感慨深いです。またご一緒できるのを楽しみにしています。
まとめ
はじめての業界の仕事は、こわいものです。知らないことが多すぎて、どこから手をつけるか迷います。
ただ振り返ってみると、やったことは「よく聞いて、よく調べて、目的から形を決めた」という、いつもと同じ手順でした。違ったのは、調べる量だけです。
ホームページを作ってください、と言われたときに、そのままホームページを作るのが正解とは限りません。
目的を聞いていくと、必要なものが別の形をしていることがあります。 そこに気づけるかどうかが、要件定義の役割だと考えています。
三重県で、業種特有の事情がある事業のWeb制作をお考えの方は、お気軽にご相談ください。まず理解するところから始めます。